株式会社TSIホールディングス

チャネル横断の
データ活用を推進するTSI

生成AI活用で描く次の成長戦略とは
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業務効率化
活用機能

Marketing Copilot
ジャーニーオーケストレーション

レディース・メンズアパレルから、スポーツ、アウトドアまで、幅広いブランドを運営する株式会社TSIホールディングス(以下TSI)。2020年にTreasure Data CDPを導入し、多様なプラットフォームとの連携、クッキーレス対応、データクリーンルームの活用など、続々と施策を打ち、マーケティングの効率化と売上拡大を実現してきた。
2025年からは、「Marketing Copilot」はじめ生成AI機能の活用にも乗り出し、データ活用のさらなる効率化、高度化を推進。株式会社TSIプラットフォーム本部デジタルマーケティング部データマネジメント課課長の竹山健司氏に、これまでのCDP活用の歩みと、次なる成長戦略を詳しく聞いた。

7900%
ROASが1000%から7900%と大幅に改善
+1.8%
アプリダウンロードを目的とした新規顧客向けの施策でクリック後CVRが約1.8%増加
+630.8%
売上目標比+630.8%の成果

竹山 健司(たけやまけんじ)

プラットフォーム本部 デジタルマーケティング部 データマネジメント課 課長

2017年 TSI ECストラテジー入社 2021年3月、会社統合に伴い株式会社TSI所属。
主に下記業務に従事。

  1. CDPを活用し、データ構築・分析・領域の施策提案・ターゲティング抽出・効果検証の実施
  2. グループ会社(自社サイト含む)の各ブランドにおけるWEB広告領域・MA / KARTEを活用した試作提案や実施の支援

多様なチャネルと効率的に連携できる

TSIは、「ナノ・ユニバース」や「ナチュラルビューティーベーシックなど、50以上のブランドを運営するアパレル企業だ。竹山氏はTreasure Data CDPを活用した顧客データ基盤を構築。各ブランドのWeb広告やマーケティングオートメーションなど、データを活用したさまざまな施策の提案、実施を担う。

まずは、Treasure Data CDP導入の経緯を整理しよう。

リアル/オンラインの顧客接点が複雑化するなか、現代のマーケターはチャネルを横断して顧客データを連携させ、速やかに活用する必要に迫られている。同社では先行してGoogle Cloudを導入してデータを蓄積、広告メディアやMAツール、Web接客ツールと、多様なチャネルで顧客とのコミュニケーションを図っていた。

一方、外部プラットフォームとの連携構築には、一部開発が必要になるなど、多くの工数を割かねばならなかった。2020年、TSIは豊富なコネクタを搭載するTreasure Data CDPを導入し、各プラットフォームと容易に連携できる環境を整えていった。

運用フェーズの効率化も課題だった。「セグメント抽出作業/外部メディア・ツールへのリスト配信作業など、非常に手間のかかる作業を削りたかった」と竹山氏。Treasure Data CDPのWorkflow機能を活用することで、「これまでアドホック的に行っていた」というセグメント抽出のプロセスを自動化した。

また、顧客データが部門やチャネルごとにサイロ化している状態も、マーケティングの高度化、効率化の障害となっていた。これらを統合してユーザーIDを一意にとらえ、顧客一人ひとりにコミュニケーションを最適化したい。そのうえで、全社横断的なマーケティングを実現することが、竹山氏の狙いだった。

 現在、同社ではTreasure Data CDPを中心に、下図のようなデータ連携を構築している。

TSIのデータ連携・活用に関して

TSIのデータ活用の全体構造
TSIのデータ活用の全体構造

スタッフのコーディネート画像や、EC/店舗購買、CRM、ECサイトやアプリの行動データをTreasure Data CDPに格納。データを元にセグメント抽出して、広告配信やメールマガジン、LINEや自社アプリのプッシュ通知、Web接客などに活用する。

前年比7倍の実績も。連携で広がるCDPの可能性

同社は、マーケティング環境の変化や、Treasure Data CDPのアップデートに合わせ、着々とデータ活用の幅を広げてきた。

Treasure Data CDP活用遍歴

Tresure Data CDPの活用遍歴
これまでのTSIのTreasure Data CDP活用の流れ

最初の1年は、主にWeb広告施策に注力。特にインパクトがあったのは、Meta広告のコンバージョンAPIとの連携だ。
2021年4月にiOSのポリシーが改定され、ユーザー行動の追跡に本人の同意が必要になった。いわゆるクッキーレスで、同社のMeta広告の計測データにも欠損が生じるようになった。
広告主とMeta社のサーバーをダイレクトに接続することで、クッキーに依存せず広告効果を計測できるのが、コンバージョンAPIの仕組みだ。同社は、ここにTreasure Data CDPを用い、購入率が高いユーザー群を予測してターゲットを抽出。それをMeta広告に連携することで、プライバシー保護と広告配信の精度向上を両立した。
また、Treasure Data CDPは、Meta社をはじめ各広告プラットフォームが提供するコンバージョンAPIとのコネクタを備えている。連携を容易に構築でき、プラットフォーム側の仕様変更などにも、メンテナンスフリーで対応できるメリットは大きい。

この施策により、TSIグループの一社は、月間売上を前年の1000万円に対し、直近で7900万円まで急伸させた。ROASは1000%から7900%と大幅に改善。要因はひとつではないが、「コンバージョンAPIによる対応が、かなりの効果を上げている」と、竹山氏は本施策を高く評価する。
また、2024年に導入した、Treasure Data CDPのカスタマージャーニーオーケストレーション(CJO)も、同社のデータ活用を大きく前進させた。従来は広告やメールなどチャネルを軸に施策の最適化を図っていたが、CJOは顧客軸でのアプローチを可能にしたからだ。
CJOでは、既存/新規/休眠、利用頻度などで、詳細にセグメントした顧客に対し、チャネルを横断したシナリオの設計が可能だ。同社では、初回購入からアプリダウンロードを目的とした新規顧客向けの施策を行い、クリック後CVRが約1.8%、売上目標比+630.8%と、成果を上げた。
また、休眠顧客に対する再購入促進施策では、クリック後CVR約1.7%、売上目標比+108.8%と、こちらも好成績を残している。

2025年には、リアルタイム機能の活用にも取り組む。自社サイトの会員登録情報をリアルタイムで取得し、Web接客ツールと連携。顧客が登録するとすぐに、直近一時間の商品閲覧ランキングをポップアップで提案する、再訪した際には新着アイテムを訴求する、などの施策を実行。
結果、ポップアップによるCVRは従来比127%と大きく改善した。「ユーザーに応じた情報を、いち早く伝えることが効果的だと、改めて実感した」(竹山氏)。

集英社との共同で行った自社データの活用も興味深い。自社ブランドと親和性の高いファッション誌のユーザーにアプローチし、新規顧客を獲得する取り組みだ。
ポイントは、集英社と同社のCDPを連携し、自社サイトに来訪履歴のあるユーザーを、ターゲットから除外したこと。プライバシーを保護しながら、完全新規のユーザーのみに、アプローチすることに成功した。
新規ユーザーの流入率は96.1%、さらにF2転換率(初回購入者のうち2回目の購入に至った割合)は48.9%と、驚くべき数字を残している。

CDP×生成AIであらゆる人材にデータ活用のチャンス

Treasure Dataは2024年、LLMに基づくAIの新機能群の提供を開始した。対話型AIのMarketing Copilot、AIがメールのテンプレートを複数生成するAI Email Studio、それらを支える基盤技術AI Frameworkの3つだ。TSIでは、早速Marketing Copilotを活用。竹山氏は「データ分析やセグメント作成の工数削減、そのことによる施策数の増加を見込んだ」と、導入の狙いを語る。

Marketing Copilotでは、自然言語でAIと対話するだけで、Treasure Data CDPからさまざまなデータを抽出できる。「ECの購買履歴、店舗のPOSデータを横断して、ひとりの顧客が購入した商品、頻度、金額などを把握するまで1分もかからない」と竹山氏。
購買データだけでなく、Webサイトやアプリの行動データなど、多様なデータを突合し、簡単にN1分析につなげることもできると、活用のイメージは広がる。

「SQLを書くなど、時間と手間のかかる操作が必要なくなる。テーブル構造さえ理解していれば、これまでよりかなり容易に、分析やセグメント作成、施策の立案ができる」と竹山氏。目的であった工数削減と施策数の増加及び売上拡大に手応えを感じている。

竹山氏は一方で、「AIが意図したとおりに、分析や抽出を実行したか、答え合わせはしなければならない」とも指摘。実際に出力されたSQLやワークフローをチェックするため、一定のスキルは必要だ。
この点に関しても、「トライ&エラーの過程でスキル構築できる」と、竹山氏は前向きだ。生成AIは、プロセスの簡易化とスキル構築の両面で、マーケティング人材のCDP活用を進めると予測する。

多くの人材がCDPに接するようになると、データ活用の幅は一段階広がる。たとえば、竹山氏が見込むのは、リアル店舗での活用だ。顧客の購買や属性情報を閲覧しながら、接客精度を上げるような運用も可能になる。

当然マーケティング部門でも、成果が出ているCJO関連施策を洗練するなど、できることは多い。目下検討しているのは、AI Email Studioによるメルマガコンテンツの自動生成だ。「AIである程度文面を作成してから、人が修正対応を行う。大幅に工数を削減し、より顧客に最適化したコミュニケーションが可能になる」と、さらなる展望を語った。

Treasure Data CDP事例集

小売・アパレル編

導入の背景から、活用後の変化までを公開