株式会社エキップ

一人ひとりにふさわしい
「美しさ」を

エキップが目指す「究極のパーソナライゼーション」
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ジャーニーオーケストレーション

3つの化粧品ブランドを展開するエキップ。同社では、複数の販売チャネルにまたがる顧客データをTreasure Data CDPで一元管理し、データドリブンなマーケティングを行える環境を整備した。さらにメール/LINE、web接客、EC同梱物明細で分断されていた顧客体験を、シナリオ機能(ジャーニーオーケストレーション)を活用して一貫したコミュニケーションへ変革することで、効果的にリピーターを増やすとともに、LTV(顧客生涯価値)のリフト効果を大幅に高めることに成功している。2人のキーパーソンに、同社のマーケティング戦略のポイントについて話を聞いた。

一貫性
EC購買の最終接点となりがちなEC同梱物明細のコミュニケーションをジャーニーオーケストレーションを使ってシナリオに組み込むことで、複数チャネルでの一貫性のあるコミュニケーションを実現
+10%
F2転換率が10%以上向上
1.4倍
LTVのリフト効果が1.4倍に

(左) 株式会社エキップ
DX推進部長 鳥橋 葉子氏
 
(中央) 株式会社エキップ
SUQQU事業部 マーケティング部 OMO/CXMチームマネージャー
小林 敦子氏
 
(右) トレジャーデータ株式会社
Senior Customer Success Manager, Lead
由川 優

顧客データの統合・活用に向け5つの「A」を実践 
管理、分析・評価から自動化・効果増幅を繰り返す

花王グループのプレステージ化粧品メーカーであるエキップ。洗練された自然体を提案する「RMK(アールエムケー)」、「すっくと立つ姿」にちなみ自立した大人の美しさをサポートする「SUQQU(スック)」、「よく動き、よく休む」がコンセプトの「athletia(アスレティア)」の3ブランドを展開している。

百貨店、直営店、直販ECサイト、外部ECモールなど多様な販売チャネルを持つ同社は、顧客のペインポイント、ブランドの強み、ブランドのパーパスの3点を満たす顧客コミュニケーションを実践するため、実店舗と直販ECの顧客IDを数年前に統合。複数のチャネルにまたがる同一顧客の購買行動を把握できるようにした。

しかし、顧客一人ひとりを深く分析してマーケティングに活かせる環境までは整っていなかったため、CDPの活用を検討。「親会社である花王が以前より使っていたこともあり、当社でもTreasure Data CDPを活用することを決めました」とエキップの鳥橋 葉子氏は振り返る。

同社はそれ以後、5つの「A」を柱に戦略的なマーケティングを展開するようになった。それは顧客データをTreasure Data CDPに集約して統合管理する「Associate(アソシエート)」、顧客データを有効活用する「Action(アクション)」、顧客の動向や施策の効果を分析する「Analyze(アナライズ)」、それら3項目のPDCAサイクルを迅速かつ的確に回すためにプロセスを自動化する「Automate(オートメート)」、効果を増幅させる「Amplify(アンプリファイ)」の5つだ(図1)。

図1 顧客データ統合活用・5つの「A」

1.Associate:顧客データを連携・統合管理する。2:Action:顧客へCRMアクションを実施する。3.Associate:顧客の動向を分析・施策を評価する。4.Associate:プロセスを自動化する。5.Amplify:効果を増幅させる。


Treasure Data CDPに蓄積したデータを整理・統合してアウトプットし、マーケティング施策に活用。
データ管理から施策の分析まで「5つのA」を切れ目なく実行している

このデータ活用サイクルを社内に浸透させたことで、現在はマーケターや営業担当者などが、顧客の購買行動や施策の効果などを、Treasure Dataから抽出したデータを分析することが当たり前になっているという。これは、BIツールを通してだけではなく、Treausre Data CDPからSQLをたたいて、ある程度集計されたデータをダウンロードし、更にExcelで加工する、

という方法でも浸透している。

「ブランドによっては外部ECモールへの出店もしており、そのセカンドパーティーデータをファーストパーティーデータと突合し、自社ECサイトと外部ECモールの利用状況をお客様の属性から分析するといった取り組みもしています。こうした高度なデータ活用は、CDPを構築したからこそ可能になったことです」(鳥橋氏)

株式会社 エキップ DX推進部長 鳥橋 葉子氏

こうした高度なデータ活用は、社内の様々な工夫によって下支えされている。その代表例ともいえるのがSQLライブラリーだ。これはエンジニアやデータアナリストでなくても、変数を書き換えるだけでTreasure Data CDPから必要なデータを容易に取り出せるSQLのテンプレート集。これらを共有・活用することでマーケティングチームや営業チーム全体に、データに基づいて意思決定をしたり施策を企図したりする文化が根づくようになったのだという。

全てのタッチポイントで一貫したコミュニケーションを実践し
初回購入者にリピート購入を促す「F2転換」を最適化

このような先進的な取り組みを行う同社だが、それでもなお解消すべき課題もあった。それは、「初めての購入者にリピート購入を促す施策の効果が十分に検証できないこと」や「異なるタッチポイントを通じて行う顧客へのコミュニケーションに一貫性が欠けていたこと」などである。

「以前は初めてお買い上げいただいたお客様に、MA(マーケティングオートメーション)ツールを使ってメールやLINEで次回購入時に利用できるプレゼントクーポンを送信。それとは別に、協力会社に運用を依頼しているWeb接客ツールでも同様にクーポンを配信していました。メールやLINEで送信した分については購買につながったかどうか把握できるのですが、Web接客ツールでの配信分に関してはECのCVしか見えず、店舗購買への影響やメール、LINEによるアプローチとの相乗効果があるのかどうかもよく見えていませんでした」と、SUQQUのマーケティングを担当する小林 敦子氏は打ち明ける。

また、メールやLINEでレコメンドされる商品と、Web接客やWeb広告でレコメンドされる商品に一貫性がなく、それら商品の購入後もなお同じ商品がレコメンドされ続けたりすることも、同社が目指す顧客体験の実現を阻んでいた。

そこで着目したのが、複数のタッチポイントにまたがるマーケティング施策を、用意したシナリオに沿って一元的に自動展開できる「ジャーニーオーケストレーション」である。SUQQUのマーケティングチームは、Treasure Data CDPに組み込まれたこの機能を用いて、店頭やECでの初回購入の2日、7日、30日、45日後のそれぞれの時点で、店頭とECの両チャネルで使えるクーポンをメールやLINEで自動送信する流れを構築。さらにサイト再訪者へはWeb接客ツールのポップアップにおいても、メール/LINE自動配信時と同じ内容のクーポンを表示することで、初購入者に対するフォローをしっかりできるようにした。

図2 ジャーニーオーケストレーションの活用イメージ

Tresure Data CDPから、Web接客、EC同梱物、LINEメール、広告を通じて、Awareness、Interest、Purchase、Retention、Advocacyの5段階の顧客コミュニケーションを支援するイメージを表した図

用意したシナリオに沿って複数のマーケティングツールからクーポンなどを自動配信することで、一貫性のある顧客コミュニケーションを実現した

マーケティングにおいては、LTVを高めるためにF1(初回購入)をF2(2回目の購入)にする「F2転換」が重視される。その施策効果をより高めるため、小林氏のチームはジャーニーオーケストレーションの活用に際して、商品に添付する同梱明細書に盛り込むメッセージの内容の見直しも行ったという。

EC同梱明細書のクリエイティブ切り替えをシナリオに組み込み「F2転換率」は前施策の約1.1倍、
「LTVのリフト効果」は前施策の1.4倍に向上

「それまではどのお客様にも同一の同梱明細書を添付していましたが、その内容を『初回ご購入者』向けと『2回目以降のご購入者』向けに分けることにしました」と小林氏は言う。

同梱明細書は商品の明細を説明するためのものだが、購入者との重要なタッチポイントとしても機能する。これまでは一律に「新商品」をはじめ「季節のおすすめ商品の案内」「店頭販売スタッフによる商品レビュー」「メイク紹介」などを掲載していたが、初回購入者向けの同梱明細書ではそうした案内を刷新。初回購入時から一定期間使えるクーポンを送信することを告知し、LINEへの友だち登録を促すQRコードを記載した。さらにメールやLINEでつながった会員にはコレクションの会員先行販売エントリー権や購入状況に応じてバースデーギフトなどのスペシャルオファーがあることを告知し、ブランドコンセプトを紹介するサイトへ誘導するQRコードも付記した。

「そのうえでジャーニーオーケストレーションの活用を進めたところ、F2転換率が大きく高まりました。また、シナリオ配信に組み込んだパラメータなどから総合的に測定した結果、LTVのリフト効果が以前の1.4倍にアップするなど、成果が確実に上がっています」(鳥橋氏)

それに加え、購入後も同一商品のレコメンドが繰り返される状況も改善し、顧客体験を改善できたことも大きいと両氏は口をそろえる。

「その後、SUQQUブランドの主力商品である『ファンデーション』と『アイシャドウ』についてはメールやLINE用の別の専用シナリオを作成しました。『ファンデーション』『アイシャドウ』『その他商品』それぞれのシナリオ配信後の反応を追うことで、購入商品によるF2転換率の違いも見えてきています。それを踏まえ、今後はカテゴリーごとの同梱明細書のコンテンツをさらに最適化することも検討したいと思っています」(小林氏)

株式会社 エキップ SUQQU事業部 マーケティング部 OMO/CXMチームマネージャー 小林 敦子氏

ジャーニーオーケストレーションの活用は他のブランドでも試行しており、SUQQUと同様にF2転換率の向上やLTVのリフトアップに寄与することが期待されているという。

購買履歴や行動データに基づき
個々の顧客に適した広告を配信

SUQQUブランドでは新たな施策として、Treasure Data CDP内の購買履歴や行動データを基に顧客をセグメント化し、パーソナライズされたWeb広告を適切なタイミングで発信する取り組みも始めている。

「最近、既存商品をリプッシュする広告やサンプル提供キャンペーンの案内を、過去のご購入者や自社ECを訪れた類似ユーザーの方に配信する試みを行いました。広告効果が高まるのと引き換えに、CPM(広告表示単価)やCPC(クリック単価)が高くつくことを覚悟していたのですが、予想したほどではありませんでした。本格的な効果検証をするのはこれからですが、全体的にはTreasure Data CDPでセグメント化した対象を基に類似拡張広告を打つことで、よりブランドと親和性の高いユーザーへのリーチを増やせそうな感触があります」と小林氏は話す。

同社はライブ配信を通じて商品を販売するライブショッピングにも力を入れている。多様なデータソースへの連携機能を備えるTreasure Data CDPはライブショッピングに参加した顧客の行動データなども容易に取り込んで統合できるため、より精緻なセグメント化をするための顧客理解を深めるうえでも心強い存在だと小林氏は評価する。

機能紹介に留まらず企画・計画策定から伴走する
トレジャーデータのサポート体制を評価

このように多くの手ごたえをつかんでいる同社だが、その実現にはトレジャーデータのサポートが大きな役割を果たしたという。特に鳥橋氏が強調するのがカスタマーサクセス部門による企画・計画策定フェーズからの伴走支援だ。

「CX向上させる取り組みをプロジェクトとして立ち上げた時に、根拠となる外部データをはじめ、マーケティング施策の裏づけとなるデータを収集してくれました。また効果検証のフレームワークを作成する際も、いろいろアイデアを出したり、壁打ち相手になったりと、一緒に悩んでくれました。今もCDPのデータを広告と連携するという、我々にとって初の試みにチャレンジしていますが、ここでも頑張ってサポートしてくれています」と鳥橋氏は評価する。

これに対し同社のカスタマーサクセスマネージャーを務める由川は「ソリューションの機能説明に留まらず、エキップ様の課題解決に必要なデータや参考となる事例、フレームワークなどを包括的に紹介させていただきました。約1年前の提案・ディスカッションが、今の革新的な取り組みに結実していることを大変嬉しく思います。お客様の成功をサポートできることは、カスタマーサクセスとして最大のやりがいです」と語る。

顧客理解をいっそう深めて
より訴求力の強いマーケティングを展開する

同社が今後に向けて構想しているのが、顧客がそれぞれのブランドや商品、店舗スタッフなどに対して抱くイメージや要望などの「ゼロパーティーデータ」をこれまで以上に豊富に収集して蓄積すること。そうしたデータをTreasure Data CDPで的確にグルーピングすれば、より訴求力の強いマーケティングアクションにつながると考えているからだ。

「ただしセグメンテーションが進んで施策が細分化していくにつれ、マーケティング担当者が手動で発信するメッセージのターゲットを設定したり、クリエイティブの内容を変えたりすることが困難になるはず。そうした課題を解消するAI機能がTreasure Data CDPに付加されれば、少ない労力で多様なマーケティングが展開できると期待しています」(鳥橋氏)

一方小林氏は、「F2」に満足することなくさらに「F3」「F4」へと転換していく施策を講じることが今後の目標だと語る。「二度以上ご購入いただいたお客様に対しては画一的な取り組みしか行えていないのが現状なので、ジャーニーオーケストレーションを用いたシナリオの拡充にも力を入れていきたいです」

私達の使命は一人ひとりの価値観やニーズに見合った「美」を提供することであり、それを「究極のパーソナライゼーション」と位置づけている。その実現にとって、Treasure Data CDPは欠くことのできないツールとなっている。

Treasure Data CDP事例集:消費財メーカー業界編

Treasure Data CDP事例集

消費財メーカー編

導入の背景から、活用後の変化までを公開