顧客インサイトの分析と発見
CDPで正確なカスタマージャーニーを得る
顧客インサイトの分析と発見
顧客理解は「信頼できる唯一のデータソース(シングルソースオブトゥルース:SSOT)」を持つことから始まります。データから傾向を特定し、パターンを見つけ、最終的に顧客に次のステップを提案するために大量のデータを処理するのは、AIと機械学習の得意分野です。CDPが複雑なデータ処理プロセスを担うことで、圧倒的に早く、正確なカスタマージャーニーを得ることができます。CDPで顧客データを分析すると以下のようなことが見えてきます。
- 最もLTVの高い顧客は誰か?
- LTVの高い顧客群に共通する特徴は何か?
- リピート購入し、ブランドのファンになる可能性が高いのは誰か?
- 直近で購入する可能性の高い顧客は誰か?
- さらに育成が必要な顧客は誰か?
- どのような顧客が解約しやすいか?
- クロスセル・アップセルの可能性があるのは誰か?
下図は分析結果の一例です。このケースでは、アルゴリズムが購入に至る可能性が高い顧客を特定し、その予測に基づいてセグメントを作成します。マーケティング担当者は、顧客へのフォローアップ計画を自動化する前に、セグメントを手動で微調整することができます。
CDPの分析を通じて発見できる顧客インサイトを見てみましょう。
より正確なアトリビューションモデルを作成する
デジタルマーケティングの初期の頃は、”ラストタッチ “アトリビューションモデルが最も普及していました。例えば、顧客が4つのブログ記事を見て、小売店を訪れ、バナー広告をクリックした場合、バナー広告が販売に寄与したとされていました。
このタイプのアトリビューションモデルは、誤解を招きます。
ラストタッチモデルに基づくと、顧客がジャーニーを開始したのがブログで、最後が広告だったときに、広告予算を増やし、ブログコンテンツの予算を減らすかもしれません。一方で、ファーストタッチモデルも正確ではありません。なぜなら、最終的な販売に寄与したのはブログだけではないからです。
マーケティング担当者は、完璧なアトリビューションモデルを探し求めています。どのタッチポイントが成功に貢献しているかを明確に把握できれば、効果のあるものをさらに強化し、効果のないものは切り捨てることができるからです。
データをCDPで統合することで、顧客とそのカスタマージャーニーに最適化されたすべてのタッチポイントを考慮したモデルを作成することができます。以下の4つのステップで行います。
- 統一された顧客プロファイルを持つ大規模な顧客データ基盤を作る
- カスタマージャーニーの中で購買決定に影響を与えている顧客接点を特定する
- 各顧客接点の貢献度(アトリビューション)を測定するために使用するKPIを決定する
- CDPの分析機能を使用して、データを正規化、相関、分析する
チャネルを跨いで新たなマーケティングの機会を見つける
顧客データを分析することで、これまで見えてこなかった傾向や相関関係が明らかになり、チャネルを跨いでカスタマージャーニーをより明確に理解することができます。
例えば、実店舗の顧客は、来店した後であればすぐにメールを開く可能性が高いかもしれません。また、Facebook上でチャットボットと対話した顧客は、Eコマースでカート落ちする可能性が低くなるかもしれません。
こうした分析によって、購入までの道のりに存在する複雑な相互作用の流れを追うことができるのです。その結果、より的確なマーケティングトリガーを作成することができます。
より的確なマーケティングトリガーとは、実店舗を訪れた顧客に、一般的なプロモーションではなく「新製品の使い方」ガイドを含むフォローアップメールを送ることであったり、カスタマーサービスに苦情を訴えた顧客には、リターゲティング広告を表示するのではなく丁寧にパーソナライズされたフォローアップメールを送るといったことです。
マーケティングを個別最適化するためのこれらの小さな調整の一つ一つが、購入の意思決定を促し、顧客とのより深い関係構築につながり、最終的には長期に渡る顧客を生み出すことができます。これらの最適化はすべて、CDPを介して展開することができます。詳細は次のステップでお伝えします。
セグメンテーションとターゲティングを強化する
CDPで顧客データを分析することの大きなメリットは、顧客の解像度を高められることです。数週間後、数ヶ月後に購入する可能性の高い顧客や、なんとなく下調べをしているだけの顧客に絞ることができます。。
例えば、SUBARUでは継続的に顧客データを分析して、どの顧客が購入の準備ができているか、どの顧客が「探しているだけ」で、どの顧客が新車購入を「空想しているだけ」なのかを見つけ出しています。これらのセグメントの顧客に必要とされるメッセージングや次のステップは大きく異なります。これらのセグメントを特定し、アプローチをパーソナライズすることで、SUBARUは最も成約が近い顧客層の成約率を14%向上させ、獲得あたりのコストを38%削減し、コンバージョン率を250%向上させることができました。
CDPは、顧客が現在どのような状況にあるか、その傾向や行動はどういったものなのかを見つけることができます。そして、とある段階の顧客がもう一歩購入の意思決定に近づくのに役立つ次のステップがわかります。この分析によって、顧客一人ひとりにパーソナライズされたフォローアップルールを自動化することができます。
類似オーディエンスを作成してリーチを拡大する
マーケティング担当者は、顧客をターゲティングするために年齢、性別、職業、ライフステージといったデモグラフィックデータを用いることがしばしばあります。しかし、デモグラフィックデータだけでは的外れなものになることもあります。東京都千代田区に住む42歳の男性全員が同じ欲求やニーズを持っているわけではありません。「年収400万円の20~25歳の母親」など、具体的なデータを取得したとしても、そのデモグラフィックデータから個々の行動を予測することは難しいのです。
そこで登場するのが、類似オーディエンスです。既存顧客の分析に基づいて潜在的な新規顧客を絞り込む方法です。機械学習によって、顧客に共通するポイントを特定し、その傾向を使用して見込み客をモデル化します。
膨大な顧客属性を解析して、コンバージョンの可能性が高い行動を見つけるには、機械学習が非常に重要です。コンバージョン自体が非常に特殊な出来事であり発生頻度も低いため、何がコンバージョンの可能性を上げているのかを特定するには大量のデータとデータ処理能力の両方が必要になるからです。
ビッグデータ活用がもたらす大きな違い
このセクションで紹介した戦術のほとんどは、既にご存知かもしれません。マーケティング担当者は常に、どのターゲットがメッセージに反応する可能性が高いかをテストし、最適化しようとしています。そうした取り組みとCDPを用いた取り組みの違いは、規模と量にあります。膨大なデータ量、分析の深さ、そして得られる顧客インサイトの質の違いであり、例えるなら「裏庭」と「東京ドーム80個分の農場」くらいの違いがあります。
もちろん、顧客インサイトを得て終わりではありません。次のステップでは、これらの顧客インサイトを顧客体験の向上といったマーケティング活動に適用し、効果を測定し、さらに最適化していきます。