顧客データの統合
ここまでのステップでは、組織全体に散在するデータを収集して、信頼できるデータ基盤を作成しました。データはCDP内で一元管理され、常に最新の状態を保っています。このデータを活用して、顧客を包括的に把握する「顧客プロファイル」を作成することができます。顧客プロファイルがあれば、全てのタッチポイントでの顧客の行動を把握できるので、カスタマージャーニーをより深く理解することが可能です。
例えば、顧客データを統合する前は、以下の4つのタッチポイントをバラバラに把握していたとします。
- ブログを読んだ
- 商品ページを閲覧した
- 店舗に訪問した
- オンラインで購入した
顧客プロファイルによって、これら4つの行動が同一人物のものであるとわかります。さらに、何が購入につながったのかを正しく理解し、その顧客とよい関係を続けるために、より関連性の高いフォローアップ施策を展開することができるのです。
次のステップでは、これらの統合された顧客ビューから顧客に関するインサイトを導き出し、施策への反映と実行のサイクルをまわしていきます。
まず、顧客データ統合をどのように行うかご紹介します。
なぜ顧客データの統合が重要なのか?
カスタマージャーニーは、以前にも増してはるかに複雑になっています。さらにタッチポイントは多くのチャネルにわたります。顧客は、ディスプレイ広告から始まり、ソーシャルメディア、Webサイト、レビューサイト、クーポンアプリ、検索、実店舗への訪問、オンラインでの購入と様々なチャネルを行ったり来たりしています。
店舗で取得される来店データとデジタル上の行動データを組み合わせる機能がなければ、ジャーニーの全体像を把握することができません。
例えば、実店舗の訪問者へのフォローアップメールで、その人がオンラインストアで購入したばかりのモノをお薦めしているかもしれません。ディスプレイ広告が最終的な購入の後押しだったにもかかわらず、データが統合されていないとそれがコンバージョンに寄与した施策だったと認識することができません。タッチポイントのすべてのデータがバラバラに管理されていると、一人の顧客のジャーニーとして捉えることができないのです。
つまり、顧客データ統合を行うことは、より効率的で、より顧客に関連性の高いマーケティングを可能にし、最終的には顧客と良い関係を構築する上でより効果的なマーケティングが行えるということを意味しています。
名寄せ処理: 一意のIDの作成
顧客データ統合における重要な要素の1つは、顧客IDの統合です。IDの統合とは、複数の顧客タッチポイントを同一人物に正しく紐付け、各プロファイルに一意の顧客 IDを割り当てるプロセスです。
手作業で行うことは非常に難しい大規模な作業です。何千ものタッチポイントから絶えず追加されるデータに、正しい顧客IDを割り当てることはほぼ不可能です。しかし、幸いなことに、このプロセスはAIと機械学習を活用することで自動化することができるのです。
CDPでは2つIDマッチング方法により、一意の顧客IDを作成します。
- 決定論的マッチング : Eメール、電話番号、ユーザ名などの識別子を検索することで、顧客のレコードを統合します。このアプローチでは、データポイントが同じ顧客に直接関連しているという高い信頼性が得られます。
- 確率的マッチング : AIを用いて、2 つの識別情報が同一顧客であるという統計的な可能性を推定して照合する手法です。使用される識別子には、IPアドレス、デバイスの種類、オペレーティングシステム、ブラウザの種類などがあります。このマッチングは、決定論的マッチングよりも確実性は低いですが、リーチを拡大したり、限られた1stパーティのデータを補ったりするのに役立ちます。
一意の顧客IDで統合することで、それぞれのタッチポイントごとに切り離された状態ではなく、顧客を”個”客として認識することができるようになります。一意の顧客IDで統合されたデータを使うことには次のようなメリットがあります。
- アトリビューションモデルの精度を向上させる
- より精度の高いデータに基づいてキャンペーンを最適化することができる
- マーケティングの効率を高めることができる。(例えば、顧客が購入済みの商品の広告を出さないようにしたり、チャネルを跨いだ出稿の頻度を制限して、顧客が広告に飽きるのを防ぐことができる)
顧客データ統合のためにCDPが必要な理由は?
CDPだけが顧客データを統合するただひとつの方法ではありません。CRMを活用したり、DWH(データウェアハウス)を構築して、データを収集し、BIツールを繋ぐといった方法もあります。しかし、「顧客データ統合」を実現するためには、CDPが最も強力で効率的な方法だといえます。
まず、CRMとDMPは、取り込んで処理できるデータの種類が限定されます。CRMはセールスとマーケティングのデータの処理に最適化されている一方、カスタマーサービスのデータやオフラインのデータを処理するのはあまり得意ではありません。
DMPは、顧客情報を統合する目的で構成されていません。ビジネスが小規模でデータ量も多くなければ手動での処理でも問題ありませんが、大規模なデータを手作業で処理するのは現実的ではありません。
また、CDPは顧客データの分析において考慮にいれるべき規制やプライバシーに関する事項を踏まえて構築されています。プライバシーの観点において適切なCDPは、自分たちが「正しいデータ活用」を行っているという安心感だけでなく、さらには顧客からの信頼にもつながります。
顧客データ統合は出発点
「顧客データ統合は一度きりの処理ではない」というのも重要な点です。顧客データ統合は、新しいデータが入ってくるたびに情報を更新し続ける必要がある「継続的なプロセス」です。顧客の情報は、時間の経過とともに強化され続け、マーケティング活動においてさらに多くのインサイトをもたらしてくれます。
CDP上で顧客データを照合するルールを設定することで、膨大な数のタッチポイントのデータから、プロファイルが絶えず更新されます。こうして最新の状態にアップデートされたプロファイルを、MA(マーケティングオートメーションシステム)に連携することで、顧客一人ひとりに最適化されたされたキャンペーンを展開することができるのです。