カスタマージャーニーを理解する
質の高い顧客データにアクセスし、効果的なデータ管理戦略を構築することで、パーソナライズされた体験による顧客エンゲージメントを強化し、ビジネスの成果に大きな影響を与えることができます。データ主導の意思決定を志向する組織が増えているなかで、カスタマーインテリジェンス市場が急成長していることは、驚くことではありません。実際、62%の組織が、すべての顧客データを一箇所に集約できるツールの導入を検討しています(参考ホワイトペーパー)。
そのため、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)を利用する企業はますます増えています。CDPは、複数のソースから顧客データを収集、整理、分析するための集中型データ基盤です。CDPを活用することで、顧客の行動や嗜好を分析し、その傾向を把握し、データに基づいた意思決定を行うことが容易になります。
例えば、顧客がどのようなコンテンツを閲覧したか、ブランドとどのように交流したか(どのソーシャルプラットフォームで交流したか)、そして実際に購買する可能性があるかなどを追跡することができます。オムニチャネルアプローチの増加とともに、「コネクテッドカスタマーエクスペリエンス」は、顧客ベースの拡大、顧客ロイヤルティの維持、そして収益の増加にとっての鍵となっているのです。
コネクテッドカスタマーエクスペリエンスを実現する上で重要となる戦術のひとつが、カスタマージャーニーの理解です。カスタマージャーニーとは、個々の顧客がブランドと接する際に辿る可能性のある道筋を指します。そのため、カスタマージャーニーを理解するには、顧客のプロセス、ニーズ、認知を理解することが求められます。この理解は、行動データ、トランザクションデータ、識別データを長期的に収集し、個々の顧客の全体像を構築するために使用することによってのみ得られます。
CDPでは、この統合された顧客ビューにより、ターゲットを絞り、セグメント化し、パーソナライズされたデータに基づいてキャンペーンを活性化し、カスタマージャーニー全体にわたって、よりつながりのあるカスタマーエクスペリエンスを実現することができます。
カスタマージャーニーをパーソナライズするために欠かせない、12の顧客データソース
カスタマージャーニーのオーケストレーションを効果的に行うことで、カスタマージャーニーの各タッチポイントにおいて、顧客とよりスマートなやりとりを行うことが可能になり、より深い顧客インサイトを得ることができます。例えば、パーソナライズされたメッセージを届ける適切なチャネルや、提供すべき適切な製品・サービスを予測できるようになるかもしれません。また、Webの訪問者が実店舗にも来店しているのか、ブログ閲覧者がオンラインで購入しているのかなど、さまざまな情報を得ることができるようになります。
しかし、最初のステップは、これらの顧客データのストリームを統合して、顧客とその行動を360度、全方位の視点で見渡すことです。その情報は、コネクテッドカスタマーエクスペリエンスを向上させるために活用できます。
1.店舗とオンラインの売上データ
実店舗を持つビジネスでは、リアルのデータとオンラインのレコードを統合することが絶対的に重要となります。実店舗とオンライン双方の販売データをCDPに連携し、顧客の活動を包括的に把握しなければなりません。
販売データは、このリストにあるほぼすべてのデータタイプとうまく組み合わされ、パーソナライゼーションのための新しいインサイトと機会を生み出します。このようなターゲットを絞ったパーソナライゼーションの可能性を見逃してはいけません。
例えば、店舗での購入情報をもとに、オンラインストアで関連商品を紹介するパーソナライズされたニュースレターを提供したり、その逆も可能です。顧客はより適切なオファーを受けることができ、リピーターになる可能性が高まるでしょう。
2.Web閲覧データ
コンテンツマーケティングの最終目標は、オーディエンスが購入の意思決定をすることです。そのためには、Web閲覧データと販売データを結びつけ、その関連性を証明し、予算を正当化する必要があります。
しかし、優れたマーケティングとは、自らの価値を証明することを凌駕します。ROIも重要です。オーディエンスがコンテンツをどのように体験したかを理解することで、どのソリューションをどのように提供するかといった、より適切なネクストステップ、オファー、体験を提案しやすくなるでしょう。
3.調査データ
ほとんどの企業は顧客リサーチを行ったことがあるでしょう。ネットプロモータースコア(NPS)、製品・サービスの満足度、店舗や電話での従業員の対応などを観測しているかもしれません。しかし、そのデータはどこに行くのでしょうか?
理想的なのは、各人の記録と、回答したアンケート、そしてその回答内容があることです。アンケートデータは、CDPのデータに追加することで、より完全な全体像を把握することができ、次のブランドアンバサダーや、解約しそうな顧客を特定するのに役立つかもしれません。
4.カスタマーサービスデータ
ここで、マーケティングデータという比較的入手しやすいデータの領域を離れ、組織全体で考えてみましょう。商品やサービスの購入後も、顧客は継続的にナーチャリングされているはずです。したがって、マーケティング活動以外でブランドとどのように交流しているかを知ることは非常に重要です。
もし、ある顧客に送るメールに、前回のカスタマーサービスでのやりとりの詳細が含まれていたらどうでしょう。「お客様の〇〇の問題を解決できてよかったです。今後、〇〇の問題を回避したり解決したりするのに役立つ記事をご紹介します」というシンプルなものでも、顧客がブランドに対して抱く印象は大きく変わります。
5.営業部門のデータ
営業部門は、マーケターにとって役立つデータストリームをいくつか保有しています。まず、販売データや成立した取引のリストがあり、それを CDP に組み込むことで、顧客の購入プロセスを追跡し、収益を生み出すマーケティングの役割を適切に把握することができます。
さらに、部門がパーソナライズされたコンテンツを作成するのに役立つ、潜在的な見込み客のデータもあるでしょう。最後に、何らかの理由で成立しなかった案件があります。これらの情報をリストの他のデータストリームと組み合わせることで、高度に調整された二回目のトライアルに踏み切ることができます。
6.広告プラットフォーム
誰がどの広告を見ているのか、どの広告が最も効果的なのかを知ることは、それ自体が貴重な情報です。さらにWeb閲覧やオンライン・オフラインの販売データと組み合わせると、それは欠かせないものになります。Google AdsやAdRollなどの広告アカウントをCDPに接続すれば、広告に加え、サポートするコンテンツも、より効果的にすることができます。
7.Webアナリティクス
Webアナリティクスそれ自体も有用なデータセットです。しかし、他の顧客データセットと組み合わせることで、その有用性は飛躍的に高まります。Google AnalyticsやAdobeをCDPに接続することで、直帰率、ページ滞在時間、クリック経路、トラフィックソース、コンバージョンなど、より詳細な状況を把握することができます。
8.マーケティングオートメーションプラットフォーム
MAはすでに大量のデータを保存していますが、それだけで完全に網羅することはできません。HubSpotやMarketoなどのプラットフォームをCDPに接続することで、重複する情報を排除し、顧客像を明確化し、育成キャンペーンをさらにパーソナライズすることができます。
9.ロイヤルティデータ
ロイヤルティプログラムの顧客を動機づけるものはなんでしょうか?どのようなデータを活用すれば、多くの顧客を惹きつけることができるでしょうか。例えば特別割引、ギフト、限定イベントなどが挙げられるかもしれません。また、ソーシャルメディア上でのブランドとの交流や、新作への早期アクセスなど、ユニークな特典も考えられます。ロイヤルティプログラムは、より有意義な方法でオーディエンスをターゲットにすることができる重要なデータの源となり得ます。
10.モバイルアプリのデータ
2025年までに小売業の売上に占めるモバイルコマースの割合が倍増すると予測(※1)される中、モバイルデータを他のデータソースに接続することは当然の選択と思われます。実際、ある小売業者は、オンライン閲覧履歴、店舗での購入履歴、リアルタイムの店舗在庫を把握することで、パーソナライズされたクーポンとターゲットを絞ったアプリ内プッシュ通知を使って、クーポンの利用率を100%増加させました。
※1 参考:INSIDER INTELLIGENCE「Mcommerce to double its share of retail sales by 2025 」
11.レガシーデータ
企業は、大きな情報環境にまだ連携されていないデータを保有している可能性が高いです。サイロ化されたアプリケーションや古いソリューションの中に、隠されたデータが存在するかもしれません。サーバーや個人のハードディスク、書類棚にある紙の上に潜んでいる可能性もあります。
これらのデータは、カスタマージャーニーを理解し、それがどのように進化していくかを理解するために不可欠です。古いデータを取り込む価値はあります。もちろん、関連性のないデータを保存しているのであれば、今こそプラットフォームに連携するときです。
12.IoT(モノのインターネット)
スマートウォッチ、フィットネスモニター、ホームセキュリティシステム、センサーなど、インターネットに接続されたデバイスは大量のデータを収集し、送信します。特にIoTは、ジオフェンスやiBeaconを利用して、物理的な場所での顧客の動きを把握することができるため、マーケターにとって大きなチャンスを提供します。IoTデバイスからのデータを使って、プッシュ通知や店頭でのキャンペーンをリアルタイムでお客様に届けることができます。
行動を促すコンテンツ
もちろん、上記のデータソースだけが、カスタマージャーニーを理解するための、統合された全方位視点の顧客像を提供するのに役立つものではありません。しかし、これらのデータソースは、顧客を知り、行動を促すためにパーソナライズを行った、適切なコンテンツを作成するのに役立つことでしょう。
カスタマージャーニーを理解し、マーケティング戦略の立案に活用することで、より有意義な顧客との交流を実現し、ROIを向上させることができます。それ故に、顧客との強固で永続的な関係を築きたいのであれば、カスタマージャーニーを理解することを最優先に考えることが求められるでしょう。
ホワイトペーパー “Connect the Customer Journey Across All Stages” をご用意しました。
是非ダウンロードいただき、優れたカスタマージャーニーの作成について詳細をご理解いただければと思います。
編集部注:本ブログの以前のバージョンは2019年に公開されました。本ブログは、3/21/23に改訂しました。
アンディ・グレメット Andy Gremett
Treasure Data, Inc. Product Marketing Director
20年以上にわたり、エンタープライズ企業に向けたマーケティングデータソリューションを提供し、収益と成長を促進する優れたカスタマーエクスペリエンスを生み出すことに注力してきた。マーケティング、セールス、デジタル化された体験を顧客の声と統合することに情熱を持ち、クライアント企業に効果的なソリューションを提供している。テキサス大学アーリントン校でBBAを取得し、カリフォルニア州セントメアリーズカレッジでMBAを取得。