Treasure Data Connected World 2023 イベントレポート
「コネクテッド カスタマー エクスペリエンスをあらゆるビジネスの中心に」(Put Connected Customer Experience at the heart of every business)をビジョンに掲げるトレジャーデータ株式会社は、データ、情報、過去から未来、そして人、あらゆるものを”Connected”する機会として、2023年11月21日フォーシーズンズホテル東京大手町で、Treasure Data Connected Worldを開催しました。400名を超えるビジネスリーダーに会場へお集まりいただき、熱気とともに幕を閉じたTreasure Data Connected World 2023。本記事では、基調講演と会場の様子を中心にレポートします。
人の心を動かし続けていくことの重要性
オープニングとして、トレジャーデータ株式会社 Head of Marketing – Japan & APACの生江瑠奈が皆様にご挨拶を行いました。トレジャーデータのビジョンConnected Customer Experienceと、今回初開催となるTreasure Data Connected Worldへの想いを語り、顧客体験を進化させるためにどのように顧客データを活用していくのかといったインスピレーションを提供する場にしたいと述べました。
CDPを再定義する時がきた
続いて、来日した米国Treasure Data, Inc. CEO & Co-founderの太田一樹が、「CDPが切り拓く未来」と題してキーノートをお届けしました。トレジャーデータの設立は2011年、米国カルフォルニアのマウンテンビューで、芳川裕誠、太田一樹、古橋貞行の3人の日本人が立ち上げました。CDP(カスタマーデータプラットフォーム)というプロダクトカテゴリーは当時マーケットに存在せず、投資家からは「クラウドにデータを置くなど、データを捨てるようなものだ」と評価されていた時代でした。
企業と顧客の認識は大きく乖離している
太田は、企業と顧客との関係性を探るにあたり、トレジャーデータが6,000人の消費者と1,500人のマーケターに行った調査を紹介しました。360度全方位で顧客を理解していると回答した企業は76%にのぼる一方、消費者が企業から理解されているとする回答は25%に過ぎません。太田はこの51%の差に、強い問題意識を持っています。ひいては「ブランドからのコンテンツのほとんどが自分には関連性はない」と考えている消費者は88%、「長年の顧客であることに、全く価値を感じていない」と感じている消費者は44%と、企業として、その活動と顧客の認識に大きなギャップが生まれているのです。ではそのギャップをどう埋めていくべきでしょうか? 太田はそれこそが「トレジャーデータが解決すべき課題」と表明します。そのための2つの機能が、Treasure Data Connected World 2023で明らかにされました。
ミリ秒単位でリアルタイム処理を実現する"Real-Time2.0"
ひとつめの発表は”Real-Time 2.0″。バッチ型CDPであるTreasure Data CDPの強みのひとつは、億単位、兆単位のプロファイルを確実にバッチ処理できることにありました。今回発表したリアルタイムCDPにより、顧客の購買活動が瞬間的、刹那的になっているという変化に対応し、リアルタイムでIDを統合し、パーソナライゼーションが可能となります。
リアルタイム処理に要する時間はミリ秒単位。まさにリアルタイムで顧客プロファイルを生成し、即座に他のチャネルでアプローチすることが可能となります。カート放棄の際のメールなどでのフォローアップ、実店舗への入店検知、ホテルチェックイン後のメッセージ送信、モバイルペイメントのメッセージ送信等が実現できるようになります。また、自動車の使用状況や、IoTデバイスの異常検知から問い合わせを受けたコンタクトセンターの対応など、従来のマーケティング施策を超えて様々な分野での活用が期待されます。
「これらのユースケースは、消費者としては当然でした」と太田は説明します。「しかしツールが整っていなかったのです」。顧客企業の強い要望に応える形で開発されたリアルタイムCDP「Real-Time2.0」は、来場者の強い関心を起こしていました。
Treasure Data CDPに20の汎用予測モデルをバンドル
「全ては優れたデータから始まる」。ふたつめの発表はAIについて。太田は、AIに関する作業の95%はデータの整備にあるとし、すでにクリーンな顧客データが存在するTreasure Data CDPを活用している企業は、その時点で競合他社に対して大きなアドバンテージがあると指摘します。一方で、転換期を迎えているAIについて、企業のAI活用では未だにITとビジネスにおいてギャップが存在しています。データサイエンティストがAIモデルを実装しても、ビジネスでは使えないという事象が多く生まれている現状があります。
今回の太田の発表は、そのギャップを埋めるものです。トレジャーデータのプロフェッショナルサービスチームが過去5年、お客様と構築してきた予測モデルを20、汎用的に利用できるかたちでTreasure Data CDPにバンドルし、マーケターがAudience StudioのGUIを使って、簡単に予測モデルを実装できるようになります。
これにより、自然言語処理を使って分析し、その先にセグメント生成やNext-Best-Action、Next-Best-Channelの提示を可能にする、いわゆる「専属のアシスタントとしてビジネスのキャンペーンをお手伝いすることができるのです」(太田)。生成AIを通して太田が見る未来には、顧客のパーソナライゼーションと、そこに提供するコンテンツ生成の自動化があります。コンテンツのタイトルやクリエイティブ、送信スケジュール、テキスト、そういった要素も全て自動的に提供されるキャンペーンも遠くはないと考えられます。
顧客データ活用の未来を、共に構築したい
従来型のCDPは、バッチ型、リアルタイム型(処理時間に数時間を要するものも「リアルタイム型」と表現されることもある)、AI、GUIなど、単一機能で分化されてきました。今回の機能発表とアップデートで、Treasure Data CDPは、バッチ処理とリアルタイム処理、そしてAI をJourney Orchestrationで統合し、1つの製品として使えるように実装しました。これは非常に画期的であるとし、「他のCDP製品を5年は引き離したと考えています」と太田は語ります。マーケターは顧客に向けて、一貫性のあるコネクテッドカスタマーエクスペリエンスを提供することが可能となります。これらの機能はすでにベータ版が限定提供されており、今後3~6ヶ月ですべてのTreasure Data CDPユーザーに提供される予定です。
トレジャーデータでは、今も月に平均700もの開発リリースが行われています。顧客企業のご要望にお答えする機能を実装するためにトレジャーデータのプロダクトチームは存在するとし「是非顧客データ活用の未来を私たちに教えてください」と太田は会場に呼びかけました。
データが多様な価値観を可視化することで世界の見え方が変わった
続いてのスペシャルセッション(Produced by Forbes JAPAN)では、慶応大学医学部教授の宮田裕章氏とアーティスト・デザイナーの長谷川愛氏が登壇。「共感の進化論〜データ活用が導く、企業と顧客のシンクロニシティ」と題したセッションが行われました。
日々膨大な情報が交差する現代において、企業がデータを駆使してどのように顧客とコミュニケーションをしていくべきか? 「企業課題とデータサイエンス」、「データからどうデザインにつなげるのか」、「顧客体験を最大化させる、企業と顧客の未来像・社会像」という3つの切り口からディスカッションが繰り広げられました。
顧客データが顧客体験をどう進化させているか? 先進的な取り組みを行う企業による8つのセッション
ブレイクアウトセッションでは、各業界のリーディング企業とトレジャーデータのパートナー企業による対談形式で、”PLATINUM”として協賛いただいた7社を含め、合計8つのセッションが展開されました。用意された2つの部屋は満席で、サテライト会場への配信も実施されるほど、盛況となりました。それぞれのセッションに関しては、2023年12月20日開催予定の”Treasure Data Connected World 2023 Online“をぜひご覧ください。
休憩時間には、会場内にTreasure Data Showcaseと題して、「Artificial Intelligence」と「Real – Time 2.0」のブースが設置され、多くの来場者が足を止め、来場者とトレジャーデータの社員との活発なディスカッションが行われていました。
Treasure Data Connected World は「つながりをつくる場」
最後の、クロージングセッションでは2024年10月の”CDP World”、11月の”Treasure Data Connected World 2024″の開催を発表。その後はネットワーキングパーティ「Connected Night」を開催。来場されている皆様が飲食とともに、セッション登壇者により深い質問を行われたり、来場者同士のディスカッションが活発に行われ、未来へのつながりも示された会は幕を閉じました。