トレジャーデータ、ABMへの挑戦【後編】〜CDP for Salesによるオペレーション変革とその成果〜

企業の法人営業・マーケティングを強力に支援する顧客データ基盤「Treasure Data CDP for Sales(以下、CDP for Sales)」。トレジャーデータ自身も、CDP for Salesを基盤に、自社の営業・マーケティング活動を展開しています。
前編と後編に分けて、トレジャーデータのアカウントディベロップメントチームが、どのようにCDPを活用し、成果をあげているのかをご紹介します。

後半では、より具体的なオペレーションの内容と、成果についてご紹介します。

見込み顧客のマーケティングプロセスの整理

CDP for Salesで構成したABMデータ基盤を活用するにあたって、まず着手したのが、マーケティングチームとADRチームでのナーチャリングステージの目線合わせでした。
具体的には、見込み顧客がどのような思考と行動を経てトレジャーデータとの商談にたどり着くのか、それをシステムでどのようにキャッチできるかを整理しました。

トレジャーデータでは、エンタープライズ企業と企業に所属する個人を理解し、適切なチャネルやタイミングでコミュニケーションを行うために、マーケティングファネルのナーチャリングステージを、その興味・関心度合いから3段階に分けて考えています。興味・関心度合いの低いところからTop of Funnel(TOFU)、Middle of Funnel(MOFU)/Bottom of Funnel(BOFU)に至るステージ構成となっています。
例えばTOFUの見込み顧客に対し行っているのは、外部展示会への出展やPR、メディアへの広告出稿、デジタル広告、そしてWebのSEOの対策などです。
自社開催ウェビナーへの参加や、ホワイトペーパーのダウンロード、オウンドメディアへの事例記事の閲覧といったものがMOFU。そしてBOFUの段階では、製品に関して1対1で相談できるオンライン導入相談ルームやお問い合わせフォームへの入力などが該当します。

例えば展示会に多数出展し、コンテンツをいくら作成しても、上記ファネルが異なれば、施策効果は乏しいといえます。2〜3年前まではこのナーチャリングステージへの考え方も各担当、各チームによって曖昧な部分がありました。「企業と企業に在籍する個々人を理解して、ニーズや課題を先読みする」「適切なチャネルやタイミングでお客様にアプローチを行い、CDPに関するご説明をして興味を持っていただく」(前編参照)ために、この見込み顧客のマーケティングプロセスの目線合わせは必要不可欠なプロセスでした。

営業部門との連携、アプローチリードリスト

オペレーションを落とし込むにあたって重要となるのが、営業部門との連携です。アカウントディベロップメントチームでは、BDR(Business Development Representative)が毎週、営業担当者一人ひとりと面談し、次にアプローチすべき企業について話し合っています。そのミーティングの際に、使用しているのがABMデータ基盤から作成した「アプローチリードリスト」です。(下記はイメージ)

アプローチドリスト_イメージ

属性情報は、トレジャーデータで保有している見込み顧客のデータです。これに外部データの企業情報や、SFAやMAに記録されている行動履歴の情報などを紐付け、Googleスプレッドシートへ定期的に出力しています。

これらの項目に加えて、例えば直近6ヶ月でアクセス数が増えている見込み客へのフラグ付与や、資料ダウンロード数、Webサイト閲覧数の集計値、、機械学習によるスコアリングの結果なども出力しています。
ADRや営業それぞれのニーズに応じて、様々なデータ項目でターゲットの絞り込みや優先順位付けを行い、施策へ落とし込んでいきます。
トレジャーデータが保有する見込み顧客リストは量も多く、このアプローチリードリストを手動で更新することはもはや不可能です。Treasure Data CDPにより、自社保有のデータと外部データ、各種ツールからのデータを一元管理し、自動で更新することで、部門間の連携もデータに基づいて行うことができるようになっています。

マーケティングと営業、そしてアカウントディベロップメントの各部門では日々触れているデータが全く異なります。一般的にマーケティングチームであればリード獲得に主眼を置くでしょうし、一方で営業は、既に製品やサービスに興味を持っている段階の見込み顧客と向き合っています。
マーケティングと営業の中間にいるアカウントディベロップメントは、マーケティングが獲得した見込み顧客の興味・関心度合いや属性を細かく分析する役割を持ちます。
部門間連携で起きがちな問題は、多くの場合、コミュニケーションミスや認識の不一致が原因です。アカウントディベロップメントが見えている世界を、正確にマーケティングチームと営業チームに共有することが大切です。

見込み顧客を2軸で可視化するダッシュボード

CDP for Salesには、アプローチリードリストよりも詳細に、見込み顧客を個人・企業単位で見ることができるダッシュボードも用意されています。

ダッシュボード-個人単位のイメージ図

個人のダッシュボードでは、属性情報をに加えて、行動履歴が可視化されます。トレジャーデータが展開した各施策に対してどのような行動を取っているのか、またその積み重ねでナーチャリングステージがどう変化しているのかを把握することができます。対応の優先度や対応担当部署、推奨されるコンタクト方法や推奨コンテンツも、データに基づいて自動的に提示されます。

ダッシュボード-企業単位のイメージ図

企業単位のダッシュボードも、 CDP for Salesで自社データ、外部データ、ツールからのデータなどが統合されて可視化されます。特筆すべきは部門別のタッチポイントです。
例えば情報システム部門、商品開発部門、マーケティング部門、新規事業部といった各部門ごと、更に役職別に、どの程度の接点があるかがを把握することができます。部門が変われば興味関心のある製品・サービスも異なる前提で、どの部門にどの製品・サービスが関心を持たれるかということも、機械学習を用いることで検討レベルがスコアリングされ、施策への反映、活動の効率化を図ることも可能でしょう。

部門別タッチポイント

商談化率は3倍に!関連するKPIも向上

最後に、CDP for Salesによるデータ活用でどのような成果があがっているかを提示して、まとめとさせていただきます。

3つの改善例をご紹介します。

1. MQL※からの商談率が約1.4倍
※Marketing Qualified Lead:マーケティング活動によって創出された見込み顧客の中で、マーケティングの基準で確度が高いと判断された見込み客

2. SAL※からの商談率が約2.1倍
※Sales Accepted Lead:MQLのうち、ADRの観点でより確度が高いと判断された見込み客

3. SAL内のconnect件数※の割合が約1.2倍
※電話やメールなどのアプローチに対して、相手からの返答があった件数

上記に加えて、商談化率では前年同期比で約3倍、という成果が出ています。トレジャーデータが定義する「商談化率」とは、 ADRが見込み顧客とのアポイントメントを取得し、顧客のヒアリング等を経て、営業側で「顧客に導入のニーズがあり、商談を進められる」と判断した案件の割合を指しています。

例えば、ADRが見込み客のアポイントを獲得し、電話をして話を聞いてみると「まだ情報収集をしているだけで、導入はまったく未定です」ということも少なくありません。商談化率が高いということは、ADRが、プロジェクト計画がある顧客をタイミングよくとらえ、アプローチすることでアポイントを獲得できていることの示唆であるとも言えます。

まとめ

トレジャーデータにおけるCDP for Salesを活用した取組の概要は以下のとおりです。

  • Treasure Data CDPに自社データ、外部データ、運用ツールからのデータを格納、統合したABMデータ基盤を構築、見込み顧客の商談化までのプロセスを整理した上で精緻なターゲティングを行う。
  • 統合されたデータを可視化し、部門間で共有することで、共通認識を基にした方針の決定と施策の実行を行う。
  • 施策の結果も統合データ基盤に反映することで、PDCAサイクルを回し、指標を改善する。

いかがでしたでしょうか。苦労しながら、他部門や技術者とコミュニケーションを取り一歩ずつ進んできた取り組みですが、いまも試行錯誤を繰り返しています。こういった取り組みに興味がある方、より詳細をお聞きになりたい方は、以下のCONTACT USより、お気軽に、ご連絡ください!

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